本宮市環境基本条例
本宮市環境基本条例
現在および将来の市民が、健康で安全かつ快適な文化的生活を営むことが出来る良好な環境の確保、並びに、人と自然が共生し、環境への負荷の少ない持続的発展が可能なまちの実現のため、平成20年9月に「本宮市環境基本条例」を制定しました。
※ 資料はPDF形式ファイルです
前文
私たちのまち本宮市は、福島県のほぼ中央に位置し、市の中心部には阿武隈川の流れとともに、平地が広がり、東部は、阿武隈山系からなる山並みや丘陵地、西部には安達太良山から連なる山並みを有し、水と緑豊かな恵みを受けている。
このような自然地形条件の下に、動植物が生息し、河川、ため池、森林等の自然資源が確保されているまちであるとともに、昔から交通の要衝でもあり、先人たちの努力により産業がバランスよく発達してきた。
しかし、近年の社会経済活動は、大量生産、大量消費、大量廃棄などにより資源やエネルギーを消費し、自然の再生能力を超えるような負荷を与えることとなり、環境の劣化が大きく進み、持続可能な社会の維持が難しい状況にある。
このような環境への影響は、地域社会にとどまらず、地球規模までに広がり、ますます複雑・多様化する様相を呈する一方で、将来にわたる問題として認識され、世界的に様々な環境への取り組みが進められている。
私たちは、等しく健全で豊かな環境の恵みを享受する権利を有するが、同様に豊かな環境を守り、育てながら未来へと引き継ぐ責務も負っている。
このような認識の下、人類の生存は自然環境がもたらす恩恵によって支えられ、育まれてきたことを改めて認識し、市、市民および事業者の全てが協働し、環境への負荷の低減に努めるとともに豊かで快適な環境を保全しながら創造していくため、ここに本宮市環境基本条例を制定する。
【趣旨】
環境基本条例制定に至る時代的・社会的背景の認識と保全・創造に努力する決意を明らかにしたうえで、条例制定の目的を述べています。
この前文は、条例の全体的な認識を示しており、解釈・運用のものさしとなります。
【参考】
前文・・この条例には、「前文」がつきました。
前文があるのは「本宮市男女共同参画推進条例」に続いて二つ目です。 この条例に定められている環境に関係した基本的な事項は、これからの本宮市の施策を決定して いく うえで重要な事項であるという認識に立って、この条例に「前文」が付けられました。
基本条例・・この条例は、題名にあるとおり「基本条例」です。
本宮市としての「基本条例」は、これが最初の条例です。 基本条例には、環境基本計画や審議会等の具体的な規定も含まれていますが、大部分は、 環境の保全と創造に関する基本的な考え方や施策の方向性を示す規定で占められており、 市の環境行政における最上位の条例という位置を占めています。
第1章 総則
目的
第1条 この条例は、環境の保全と創造についての基本的な考え方を定め、市、市民および事業者の 責務を明らかにするとともに、環境の保全と創造に関する施策の基本的な事項を定めることにより、 現在および将来の市民が健康で安全かつ快適な文化的生活を営むことができる良好な環境の実現 に資することを目的とする。
趣旨
本条は、環境基本条例に規定している事項(基本的な考え方、市民・事業者・市の責任と義務、環境の保全と創造に関する施策の基本的な事項等の推進)をまとめて記述し、この条例の究極目的として、現在と将来の世代の市民が健康で文化的な生活を営むことができるようにすることを掲げました。
定義
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 環境への負荷 人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となっているものおよびそのおそれのあるものをいう。
(2) 地球環境保全 人の活動による地球全体の温暖化またはオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体または広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに市民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。
(3) 公害 環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態または水底の底質が悪化することを含む。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下および悪臭によって、人の健康または生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに動植物およびその生育環境を含む。)に係る被害が生ずることをいう。
趣旨
本条は、この条例で使っていることばで、今まで一般的にはあまり使われなかったことばや、重要な概念を表していることばの意味を説明しています。
環境基本法第2条に定めることばの意味をおおむね引き継いでいます。
基本理念
第3条 環境の保全と創造は、全ての市民が健康で安全かつ快適な文化的生活を営むことができる良好な環境を確保し、これを将来の世代へ継承していくことを目的として行われなければならない。
2 環境の保全と創造は、人と自然が共生し、環境への負荷の少ない持続的発展が可能なまちの実現を目的として行われなければならない。
3 地球環境保全は、人類共通の課題であり、すべての日常生活および事業活動において、積極的に推進されなければならない。
趣旨
本条は、この条例全体の基本的な考え方を規定しています。
第1項は、環境への基本的な認識を表しています。
第2項と第3項は、環境に関する施策を進めるうえで特に必要となる考え方を規定しています。
市の責務
第4条 市は、基本理念に基づき、環境の保全と創造に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、実施するものとする。
2 市は、市民および事業者が環境への理解を深め、かつ、意欲を高めるため必要な措置を講じなければならない。
趣旨
環境基本法第7条の「地方公共団体の責務」の規定を受けて、本市が行うべき施策を規定しています。第5条の市民・第6条の事業者の規定と併せて、「すべての者」(各主体)の責務を規定しています。
市民の責務
第5条 市民は、基本理念に基づき、その日常生活において環境への負荷の低減に自ら努めなければならない。
2 前項に定めるもののほか、市民は環境の保全と創造に自ら努めるとともに、市が実施する環境の保全と創造に関する施策に協力しなければならない。
趣旨
本条は、第3条の基本理念を受けて、市民の責務を規定しました。今日取り組むべき環境問題は、事業者の活動のみならず、市民の日常生活に伴って発生する環境への負荷の集積が目立つようになっています。例えば、自動車交通等による大気汚染、生活排水等による水質汚濁、廃棄物の排出量の増大などです。
このような問題の解決には、市民一人ひとりの努力の積み重ねがきわめて重要であるとの認識に立った、積極的な取り組みが必要です。
事業者の責務
第6条 事業者は、基本理念に基づき、その事業活動に伴って生じる環境への負荷を低減するため、自己の責任において、必要な措置を講じなければならない。
2 事業者は、法令、条例等の規定に違反しない場合においても、良好な環境を損なうことのないよう最大限の努力を払わなければならない。その事業活動により良好な環境の侵害に係る紛争が生じたときも同様とする。
趣旨
本条は、第3条の基本理念を受けて、事業者の責務を明らかにしました。
事業者は、事業活動のすべての段階において、環境の保全および創造に配慮しなければなりません。
環境への負荷の原因者としては、事業者に限らず、市民も生活排水や家庭ごみなどの例から原因者の一人と考えられますが、市民と比較して、環境に与える負荷の量が格段に大きいこと、事業活動の促進のための組織を保持しており、環境の保全および創造のための措置を実施しうる能力が、市民のレベルとはおのずと異なるため、市民の責務とは異なる規定を設けたものです。
第2章 環境の保全と創造に関する施策 (基本方針)
第7条 市は、環境の保全と創造に関する施策を策定し、実施するに当たっては、基本理念に基づき、次に掲げる事項を基本方針とし、総合的かつ計画的に行わなければならない。
(1)地球温暖化防止を推進するため、省資源、省エネルギーの推進を行う。
(2)循環型社会を構築するため、廃棄物の適正処理および減量化等の推進を行う。
(3)豊かな自然環境を保つため、生物の多様性を保全するとともに、河川、ため池、森林、農地等の自然環境を体系的に保全し、自然と共生できる地域づくりを行う。
(4)良質で健康的な生活環境を確保するため、公害の未然防止、緑化の推進、歴史的・文化的な景観の形成等を行う。
趣旨
本条は、第3条の基本理念を受けて、施策を実践するにあたっての基本的な考え方、進め方を規定しました。
環境基本計画
第8条 市長は、環境の保全と創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、その基本的な計画(以下「環境基本計画」という。)を策定しなければならない。
2 市長は、環境基本計画を策定するに当たっては、市民等の意見の反映に努めるとともに、本宮市環境審議会の意見を聴かなければならない。
3 市長は、環境基本計画を策定したときは、速やかにこれを公表しなければならない。
4 第2項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。
趣旨
本条は、本市における環境の保全および創造に関する基本的な計画として、環境基本計画を定めるべきことを規定したものです。環境基本計画は、本条例の目的を達成するため基本方針にのっとり、環境の保全および創造に関する施策の総合的、計画的な推進のための中心的な仕組みであるといえます。
市の施策と環境基本計画との関係
第9条 市は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、実施するに当たっては、環境基本計画との整合を図るとともに、環境の保全と創造に配慮しなければならない。
趣旨
本条は、市の各種施策について、環境に配慮しながら実施することを規定しています。
市民等の意見の反映
第10条 市は、環境の保全と創造に関する施策を策定し、実施するに当たっては、市民等の意見の聴取および反映に努めるものとする。
趣旨
本条は、市民等の意見を反映しながら施策を実施していくことを規定しています。
開発事業等に係る環境の配慮
第11条 市は、土地の形質の変更、工作物の新設その他の自然環境の適正な保全に支障を及ぼすおそれがある事業(以下「開発事業等」という。)を行おうとする者が当該事業の実施に当たり、あらかじめ当該事業に係る環境への影響について適正に配慮するよう、自然環境の保全、開発事業等の必要性その他の総合的見地から助言その他の必要な措置を講ずるものとする。
趣旨
本条は、開発事業等にあたっての環境配慮について規定しています。
市の率先実行
第12条 市は、自らが事業者および消費者としての立場であるとの認識のもとに、環境の保全と創造に資する行為を率先して実行するものとする。
趣旨
本条は、市も地域における一つの事業者として、積極的に環境保全活動等を実践していくことを規定したものです。
環境教育および環境学習の推進
第13条 市は、市民等が環境の保全および創造についての関心と理解を深めるとともに、市民等による自発的な環境活動を行う意欲が増進されるようにするため、環境教育および環境学習が推進されるように必要な措置を講ずるものとする。
趣旨
本条は、今日の経済活動や日常生活に起因する多くの環境問題に対応するため、今後の経済活動の在り方や、市民のライフスタイルの見直し等を求めるために、環境との関わりなどについての教育や学習を拡充することなどを規定したものです。
環境施策の実施状況の公表
第14条 市長は、毎年度、環境の保全と創造に関する施策の実施状況等を取りまとめ、その概要を公表するものとする。
趣旨
本条は、環境の現状並びに環境の保全および創造に関する施策を公表することを定めています。方法としては、(仮称)「本宮市環境白書(本宮市の環境)」の作成と公表によることとなります。
今日の環境問題に対応していくためには、すべての者が自主的かつ積極的に取り組むことによって行なわなければなりませんが、環境白書の作成・公表は、環境の現状に対する理解と認識を深め、環境の保全および創造に関する行動を、より促進することになると考えられます。
国、県および他の自治体等との協力
第15条 市は、環境の保全と創造に関する広域的な取り組みを必要とする施策については、国、県および他の自治体等と協力して推進するよう努めるものとする。
趣旨
本条は、環境基本法第40条の「国および地方公共団体の協力」に規定された「国および地方公共団体は、環境の保全に関する施策を講ずるにつき、相協力するものとする。」を受け、他の機関との協力の必要性を規定しています。
地球環境保全の推進等
第16条 市は、地球環境の保全に資するため、地球温暖化の防止、オゾン層の保護等に関する施策の推進を図るとともに、環境の保全および創造に関する国際的な連携に努めなければならない。
趣旨
環境問題は、空間的には地域を超えて地球規模にまで広がりを持っています。こうした広がりのある問題に対しては国際的な連携が不可欠であることを規定しています。
第3章 環境審議会
設置
第17条 市長の環境の保全と創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するうえで必要な事項を調査審議するため、本宮市環境審議会(以下「審議会」という。)を設置する。
所掌事務
第18条 審議会は、市長の諮問に応じ、次に掲げる事項を調査審議する。
(1)環境基本計画に関すること。
(2)環境の保全と創造に係る基本的事項に関すること。
(3)その他、環境の保全と創造に関し必要な事項に関すること。
2 審議会は、環境の保全と創造に関する重要事項について、必要があると認めるときは、市長に意見を述べることができる。
趣旨
本条(第17条、第18条)は、環境基本法第44条の「市町村は、その市町村の区域における環境の保全に関して、基本的事項を調査審議させる等のため、その市町村の条例で定めるところにより、環境審議会等を置くことができる。」という規定に基づいて、本宮市にも環境審議会を置くことを規定したものです。
組織
第19条 審議会は、市長が委嘱する委員15人以内をもって組織する。
2 委員の任期は、2年とし、再任を妨げない。ただし、委員が任期の途中で交代した場合の後任者の任期は、前任者の残任期間とする。
会長および副会長
第20条 審議会に会長および副会長を置く。
2 会長および副会長は、委員の互選により定める。
3 会長は、会務を総理し会議の議長となる。
4 副会長は、会長を補佐し、会長に事故があるときは、その職務を代理する。
会議
第21条 審議会の会議は、会長が招集する。
2 審議会は、委員の半数以上が出席しなければ会議を開くことができない。
3 審議会の議事は、出席委員の過半数をもって決し、可否同数のときは議長が決するところによる。
趣旨
本条(第19条、第20条、第21条)は、本宮市環境審議会の組織、委員の人数、任期および会議等について規定しました。
附則
施行期日
1 この条例は、公布の日から施行する。 (本宮市環境審議会条例の廃止)
2 本宮市環境審議会条例(平成19年本宮市条例第145号)は、廃止する。